地域の素材を生かした一本

凪の音ブルーイングは、宮崎県串間市の旧やまびこ保育園跡地を活用して立ち上がった小さな醸造所だ。鹿児島県の焼酎蔵で24年間、杜氏として酒造りに携わってきた田村崇さんが、家族と過ごす時間を大切にしながら、少量仕込みでビールを醸している。

今回の季節限定醸造として案内された「やまびこエール」は、串間市のレモングラスを使った発泡酒。公式ストアによると、果実感と発泡感を大切にした仕上がりで、ワイングラスやシャンパングラスでゆっくり味わう飲み方が勧められている。瓶内二次発酵を採用しているため、きめ細かな泡立ちと、時間の経過による味わいの変化も楽しめる。

このビールの面白さは、飲み始めと少し時間を置いた後で表情が変わる点にある。造りたては爽やかさが前に出て、熟成が進むと丸みや深みが増していくという。レモングラスの穏やかな香りは、白身魚の料理、蒸し料理、フレッシュチーズのような、素材感を大切にした料理とも相性がよい。

凪の音ブルーイングは、旧園舎をそのまま使い、仕込みから瓶詰め、ラベル貼りまでを手作業で行う体制を続けている。土地の記憶や家族の手仕事を背景にした「やまびこエール」は、串間市で生まれたブルワリーの現在地を伝える一本として注目したい。